インターハイ予選県大会 1回戦

東信6位の南高の相手である中信3位の松本第一高校は
会場の松本総合体育館から女鳥羽川を隔てたところにある、
ここ数年でバスケ部を強化して、地区大会を勝ち上がってきた私学である。
南高生にとっては初の県大会で
会場は、コートが3面取れて、国内トップリーグのファイナルにも使用される
立派な体育館。
雰囲気に飲まれてしまったら、その時点で負けは確定‥
大丈夫かな・・との懸念を他所に
元来がノー天気な彼らは、いつもと同じ様子のようだ。
内藤に至っては
自宅にバスケットシューズを忘れてきて
お母さんに届けてもらっていた‥
彼は何を思ったのか
前日にゲームパンツとゲームTシャツを着て練習しており
『今から準備してるの・・・?』
『洗濯はいいわけ・・・?』
と突っ込まれていた‥

そんなマイペース軍団にあって
誰よりもこの状況を認識しているキャプテンのたける
試合前の観客席でも誰とも口をきかずに、ひたすら精神を集中させていた。
そしてもう1人‥
高校からバスケを始めてスタメンを勝ち取った唯一のプレーヤーである晃も
アップアップ状態‥
試合への入り方やテンションの持って行き方など
まだ慣れていない面があるので、無理もない。
好不調の波があるシューターの彼
今日が好調な日であることを、祈るばかりだ‥



(Let's Go‥みんなで盛り上がるこの瞬間が大好きだった)


試合の入り方は上々‥
とても県大会初参戦とは思えない。
アップアップのはずの晃のシュートが良く決まる
彼はまた成長した。
コントロールタワーの中西も
課題であったミスが少なく、良い判断でパスを配給
足首の捻挫が完治していない2年生センターの赤沼の落ち着いたプレーも光る。
20cm高い相手にマッチアップされて
思うように攻められないりょうすけも、ディフェンスや繋ぎで貢献。
そして彼独特の嗅覚で、ここぞの場面で確実に3ポイントシュートを決める‥
たけるはといえば
1本目のドライブでチャージングを取られ、波に乗れなかったためか
いつもより動きが硬く、らしくないミスを連発するが
やがて調子を上げてきて、さすがの個人技で得点を稼ぐ‥
前半は互角の展開で進む。
相手も波に乗り切れていないようで
事前に得た情報ほどには、強さを感じない‥
途中、4点リードされてちょっと嫌なムードになりかけたとき
速攻に走ったともあきのレイアップシュートがバスカン‥
しかもインテンショナルファールをもらい、フリースロー2本決めて4点プレー
同点‥
こういう場面での彼は、本当に頼もしい。
晃とポジションが被るともあきは
アウトサイドシュートが得意な晃に対して
インサイドが強く、リバウンドも取れて
さらに味方を生かすこともできる器用さがあり
バスケットを良く知っているプレーヤーだ。
スタメンで十分に活躍できる力を持ちながらも
経験が浅く、スタートからコートに出て調子を乗せたい晃の控えとしての
役割を担ってもらっており
その信頼通り
途中から出ても必ず仕事をしてくる。
こういうシックスマンのいるチームは、強いのだ。
前半終了間際に、中西の3ポイントが決まり
35対35の同点で折り返す。


勝負の第3ピリオド
かつては後半で失速する精神面の脆さがあった南高も
東信大会での接戦経験を経て、粘り強さが身についてきたようで
ディフェンスではたけるがことごとくリバウンドをもぎ取り
オフェンスも機能して、一時は9点のリードを奪う‥
ビデオ撮影のため
松本第一高校応援席にポジショニングしていた勇気あるたける父の言うには
このピリオドで、相手の応援の空気が変わったとのこと‥
バリバリのホームコートで、柔道部まで来ていた大応援団の松本第一高
相手は格下の、長野県高校バスケ界での知名度はゼロに等しい野沢南高
おそらく、スカウティングはしていないはず‥
一般に
実力差が出て勝敗の方向が見え始める3ピリオドでリードを奪われるまさかの展開に
不穏な雰囲気になるのも無理はない‥


第4ピリオド
東信大会からの5試合で
野沢南高が10点以上のリードを奪ったのは小諸高戦の再延長のみ
優勢に進めながら、突き放してセーフティーリードにならないところが
彼らの優しさか・・
リードしているときは
さっさと時間が経過してゲームが終わって欲しいと願うばかりだけれど
このまま終わらせてはくれないだろうことは
これまでの実戦経験から十分に学ばせてもっており、全く楽観はできない‥
途中、オフェンスが停滞し、得点が伸びない南高に対して
相手はアウトサイドシュートが決まりだす‥
これまで戦ってきた全てのチームと同様に
頻繁に選手交代をしてきた松本第一高。
控えのいない1番の中西と5番のたけるはフル出場が前提で
その他のポジションも最小限の交代で凌ぐ野沢南高にとって
体力的に最も苦しい時間帯だ‥
息を吹き返す相手の応援団‥得点のたびに盛り上がる
ついに残り26秒
相手のシュートが決まり、68対69と逆転される‥
タイムアウト


最後のオフェンスは、エースのたけるに託す
本人も周囲も、異論を唱えるはずのない選択‥
この試合で
抜群のオフェンス能力を持つ、只者でないプレーヤーと認知されたであろう彼には
当然マークが集中するだろうが
そんなことはお構いなしだ。
エンドスローから晃が繋いで、たけるにパス。
たけるはディフェンスの動きをしっかりと見ながらカットイン‥
『相手は絶対に飛ぶから、フェイクを入れろ』とタイムアウトで指示した通りの
教科書通りのフェイントを掛け、相手を飛ばせてからシュート‥
この土壇場で、これだけ落ち着いてプレーできる彼は大物だ‥

(おいらにゃ真似できねぇ‥)
逆転!
残り8秒の相手攻撃で2本シュートを打たれるも外れて‥
70対69で勝利!!
悲鳴と歓声の交錯する場内‥


またもや、南高劇場‥
最後のブザーまで全く気が抜けない展開はいつものことだけど
よく勝つよなぁ・・・我が子ながら天晴だ
本当に、よく頑張ってくれた。
試合後、観客席に戻る途中でたけるから
『最後のシュートは鳥海さんの為に打ちました・・』と言われる。
泣かすね‥


(りょうすけのお父さん、佐藤昭則さんと)


◆アフターゲーム


(宿へ向かうバスにて)

(会場近くにある松本第一高校 私立の校舎は立派だ)

美ヶ原温泉で宿泊)



(最後にみんなで泊まれて、いい思い出になりました)


(夕食)


(内藤どうした・・?)


(晃の妹のみさきちゃん)

(ゲームですか…?)


(茶碗蒸しを食べるお母さん)



(入浴)



(翌日の赤穂戦に向けてミーティング)

(重田コーチの話を真剣に聞くメンバー)

(寝ころがって聞く大物2年生1名・・・)

(2次会)