原因と結果の法則

昨秋の高校バスケ選抜東信大会の女子会場で偶然お会いした
長野大学女子バスケット部の佐土監督。
『野沢南高は東信の台風の目になると思うよ・・』
とおべんちゃらを言わたことを真に受けて
不遜にもその場で練習試合をお願いしていた。
http://d.hatena.ne.jp/ten-sei/20100904
長野大学と練習試合させてもらえそうだぞ・・』と彼女たちに伝えてから半年以上。
おそらくインターハイ出場は困難であろう南高にとって
来週末の県大会が高校部活動最後の晴れ舞台になる。
『やべぇ・・時間が無い・・』
性格は極めてズボラなわりに意外と責任感は強いおいらは焦り
監督にお手合わせを懇願。
快諾頂いた上、なんと監督の愛弟子であるクラブチームのNKOも呼んで頂く。
NKOは昨年度の北信越クラブ選手権のチャンピオンチーム。
先月の国体予選は
1位 信州大学
2位 NKO
3位 長野大学
昨年末に対戦させてもらった信州大学(結果は木っ端微塵・・)含め
県の一般女子のトップ3と対戦できるなんて、なんと幸せな娘たち。
先の東信大会で満足いくプレーが出来ず
ガードとしてのアイデンティティーに迷い悩む子より相談を受け
メールで文通しながらなんちゃってアドバイス
県大会までの気持ちの処し方と最後の練習試合に対する心持ちについて諭し
おぼろげに合意されつつあることを感じていたので
出来ることなら
今日はおばさんバスケよりこちらの会場で見守りたかった・・・
長野大学に寄ってちょっとだけ励まして
差し入れに菓子パン50個ほど置いて
長野市の試合会場へ向かう。
悩むだけ悩んだ上で、在りたい姿をイメージすること。
その過程で紆余曲折は必ずあるけれど
そうして迎えた本番は大抵、ハッピーエンドになるもの。
紛れもない『原因と結果の法則』を、実感して欲しい。
今日はどうだったかな・・?


前日に引き続いてのママさん・・いや家庭婦人バスケ長野県予選大会。
準決勝の相手のフカガワ。
メンバーの補強もされているようで
試合前のアップを観察してみれば
相手は誰がスタメンなのか予想できないほど
いい動きをするプレーヤーが豊富にいる。
試合開始直後から、
新規加入メンバーのシュートが炸裂‥
長野県女子バスケ界ではブランド最大手の信州大出身の若いフォワードは
既にフカガワのエースの風格。
ママさんバスケのカテゴリーでプレーするには勿体無い・・
ディフェンスリバウンドも取れず
前線でプレッシャーをかけれられまともに攻められず
1ピリ終わってなんと2−18。


2ピリからようやく動きが良くなってきた佐久クラブ。
三年寝太郎みかちゃんが本気モードだ。。
けれど、劣勢を跳ね返すには至らない。
高さも選手層も勝っているフカガワ。
ベンチからもよく声が出ていて、メンバーチェンジを頻繁にしてくる。
傍から見れば、ガチで戦う姿勢はフカガワに分がある。
前日にベタ褒めした真由美ちゃんも、思うように攻められない。


準決勝のフカガワ戦がヤマであることは
佐久クラブの誰もがわかっていること。
皆、一生懸命に動いているのだけれど
やることなすこと、上手くいかない。
圧倒的な個人技を駆使して得点する訳でなく
パスを多用してノーマークを作るのが佐久クラブのオフェンスシステム。
助け合いの精神をもって攻める、美しき日本的協調性がウリだ。
相手のディフェンスがゾーンだったりすると
それはそれはうまいこと攻めるのだけれど
これがマンツーマンディフェンスの激しいプレッシャーに遭うと
途端に攻めあぐねるのが弱点。


自分が出場する試合は
あまりのヘタレぶりに
今やどれだけ酷評されても抗弁できないほどの体たらくである一方で
こうして冷静に他人の試合を眺めれば、いくらでも批評できるから、こわい。
いっそプレーはきれいさっぱり引退しちゃった方がいいかな・・と思うのは
こういう時。



閑話休題
ママさんバスケ界には、シニアチームなるものが存在する。
寿命の長い女性ならでは特徴的な在り様であり
若手の中年チーム(表現しにくい・・・)を卒業後も
前期高齢者のシニアチームに移行してバスケを続行できる
ありがたいシステムだ。
ある意味これも、中高一貫と言えよう。

一方で
学生や教員、クラブ、実業団により構成される一般大会に参戦するチームと
その上部団体(どっちが上部だ・・?)のママさんチームの
2部制をとるケースもある。
バリバリの一線を退いた後も活動の場が用意され
一般、ママさん双方にとって新陳代謝が可能な
良く考えられたシステムである。
この後ろにシニアチームが控えていれば磐石。
そのまま墓場まで直行しそうな勢いであり
バスケ歴50年なんて人も、珍しくないのだろう。。。
ここに
生物学的分類によるところの♀の持つ決定的な強さを感じるのは
おいらだけではあるまい。
フカガワは一般とママさんの2プラトン体制で
ミセスチームの層の厚さはこのシステムによるところが大きいと思われ
しかもミスフカガワは
前出のフラッパーズでもなかなか勝てない、赤丸急上昇中のチームだ。
友達の友達ヅテで新規加入する佐久クラブとは、成り立ちが根本的に異なる。



そんな背景もあり
苦戦を強いられる佐久クラブ。
その上さらに
後半、エースのひろみキャプテンが負傷退場し
いよいよもってお楽しみな状況となる。
ダブルスコアで負け・・・

(バナナ食べて頑張るか・・ 頼むぜ真由美)

3位決定戦の相手は長野クラブ。
勝った方が全国行きの切符を得る意味において
既に出場が確定したチーム同士による決勝戦より
気持ちの上ではプレッシャーが大きい。
この1勝に対する思い入れは
ひょっとしてプレーヤー以上かもしれない池ちゃんと二人
コートサイドで応援する。


フカガワほどの破壊力は無い長野クラブは与し易いチーム
けれど
大黒柱を怪我で欠く佐久クラブは、いつものリズムが作れない。
ポイントゲッターのスティンガーズ武田先輩夫人の順子さんも
ひろみキャプテンの代役をこなさざるを得ない負担から
いつもの点取り業に専念できない。
フカガワ戦は気負ってメタメタだった真由美ちゃんにも
いまひとつ復活の兆しが見られない。
この二人のオフェンスマシーンを生かすことが最大の使命であるれい子も
イマイチだ。
気持ちが空回りしていることは、傍で見ていると嫌なほどわかる。
それは
懸命に守っているつもりのゾーンディフェンスにおいて
ポコンポコンとノーマークを作ってしまうことからも明白で
そこを突かれて
思い切りあるシュートを高確率で決められる。
イケイケな雰囲気の相手とは対照的に、重たい試合展開。
こういうゲームは
プレーする側も見ている側も、フラストレーションが溜まる。
この状況を打開するべく
みかちゃんは何度も果敢に切り込み
センターの美和ちゃんは体を張ってリバウンドを取り
控えフォワードの弥生は、パスを受けたらいつものように何も考えずにとにかく打ち
ワンポイントでコートに出たバックアップメンバーは
僅かながらもスタメンを休ませてくれた。

3ピリ終わった時点で20対30とリードされる。
このロースコアから
1ピリ8分のママさんルールにて
10点差を跳ね返すことは、至難の技である。
『あぁ・・大阪の夜が・・・』 ため息のコートサイド。


ところがである・・
4ピリ開始直後
オールコートでなりふり構わぬディフェンスを仕掛ける佐久クラブ。
まさかママさんがそう来るとは、予想だにしなかった。
バックコートでボールを奪い取り、連続得点・・6点差。
『おいおいマジかよ・・?』
なにか吹っ切れたように、動きが良くなる佐久クラブ。
ついに残り3分で同点・・・
コートサイドの二人の気持ちは動転・・・
そこから一進一退の攻防。
長野もしぶとくシュートを決めてくるが、
ここに来てオフェンスマシーン復活の真由美ちゃんが
難しいシュートで気合で入れる。
どちらに転ぶか、全く読めない。
拮抗した状態が続き、2点ビハインドの残り1分のオフェンス
あろうことか、れい子が痛恨のパスミスをやらかし、速攻喰らって4点差‥
『なにやってんだおまえわぁ〜』 コートサイドから怒鳴る夫‥
残り時間と得点差からして、致命的な失態である。
試合終わったら泣くまで説教してやろうと、この時点で誓う。


ところがである・・・
そのヘタレれい子が
直後のオフェンスでなんと
左コーナーの3ポイントライン手前からシュートを決める。
今大会見た中で、一番思い切りのいい、迷いのないシュート。
本来
彼女がこの厳しい局面において積極的に点を取りにいくタマではないことは
誰よりもおいらが知っている。同じ小心者として。。。
でもこの場面
これで負けたら
A級戦犯としてチームメイトにあまりに申し訳ないとの彼女の想いは
痛いほどに理解できた。
てめえのミスはてめえで取り返す・・・
その感情が、彼女の腹を据えさせたのだろう。
直後のオフェンスで順子さんの鮮やかな同点シュート
そして圧巻は・・
終了10秒前・・・
真由美ちゃんがトップから放った3ポイントシュートが入り
まさかの逆転勝利。
ほろ苦いデビュー戦から2年
最後のシュートを誰でもない自分に託し
何の迷いもなく狙って決めるられるあんたは
天晴れだぜ真由美。
彼女をキーウーマンと読んだカリスマも
さすがにこのパフォーマンスは読めなかったばい・・
沸きに沸くベンチと応援席。
信じがたい・・・


4ピリのスコアは23対8
冷静に振り返れば
この8分間で演じたプレーが前半から出来ていれば楽に勝てたと思うけど
前半のヘタレがあったからこそ
最後の異常なまでの集中力に繋がったとも言える。

これはおいらだけではないと思うけど
見ていて
シュート態勢に入った瞬間に、そのシュートが入るか落ちるかを
かなりの確率で当てられる。
決してユリ・ゲラー並みの予知能力があるわけではなく
当人の真の実力と
その人に対するおいらの信頼感と
その試合のその場面に至る経緯から
その人がそこで決めるシナリオにあることが、わかるのだ。
れい子も順子さんも真由美ちゃんも
3ピリまでのプレーは、本来の力から程遠いもの。
このまま終わってしまうことは
自分自身のシナリオとして不自然であることを
見ているおいら以上に当人たちが感じていただろう。
見た目に焦ってプレーしていた前半は、打った瞬間に外れるとわかるシュート。
対して
4ピリ最後の極限状態でシュートに向かう瞬間の彼女たちの所作は
心技体が見事に統一されいて
思わず 『これは入る!』と叫んでしまう。
さらに
青春ドラマにありがちな表現を引用させてもらえば
仲間の成功を願うチームメイトや応援席の気持ちも
ボールに乗っかっていたはずだ。
それだけの要素が揃っていれば、入ることが自然の理なのだろう

無論
相手の長野クラブにも同様の想いがあったはずだけど
最後のサジ加減は、勝利の女神のみぞ知るのだろうな。。。
まさにこれは、『原因と結果の法則』
おばさんバスケでこんないいモノを見ることが出来るとは思わなんだ。
反省点を挙げればキリがないけど
刹那刹那を生きるオバタ○アンにとっては
結果オーライでオールオブオッケーなんだよな・・・きっと。



(たいしたもんだわ・・)


坂城町の温泉にて

(なぜか釣りキチ三平の作者の作品と文が飾られている‥)

(いいなぁ‥)


(ぶしもりやにて打上げ)