舞台見物

上田市で開催された友人の佐川ちゃん演じる舞台を観た。
地方公演で長野県内を回っている。
各地の演劇団体が招待している舞台ゆえ
対象はその関係の方々のみであり
一般客の入場は許されていないのだけれど
彼の親戚ということにしてもらい、
青木たける姉の理絵ちゃんと共に
楽屋口からこっそり入れてもらう。
ありがとう。


あらすじ---
昭和7年、東京本郷にある下宿屋『平和館」。理化学研究所に勤める若き物理学者・友田晋一郎は、研究所のレペルの高さに自信を失い、故郷の京都に帰ろうとしていた。また同じ平和館の住人富佐子も、レピュウで踊っていたのだが若い踊リ子に人気を取られ、失意のなか東京を去るところだった。
そんな折、理化学研究所の同僚・武山が、友田の提唱した物理学上の仮説が主任の西田に認められたという朗報を伝える。友田はあらためて研究所に残る決心をするのだった。
この「平和館」には理化学研究所の同僚やピアノ弾き、新劇青年、野球に熱中する東大生など。あやしくも個性的で愉快な人びとが暮らしていた。
友田は物理学者として成長しドイツへ留学しするが、日本は少しずつ戦争に向かいつつあり、住人達の生活も一変する…。

市民会館のホールに設えられた2階建ての下宿屋のセットは
2日間のみの公演に使うには勿体無いほどの完成度で
この限られたスペースの中
学者、踊り子、新劇青年、東大野球部員、ピアノ弾き・・
様々な人間模様が次々と展開、進行する舞台ならではの手法にて
休憩を挟んでの3時間。
実に見応えがある。

数年前に一度、東京で観た本舞台は
このキャストで2006年に初演以来、100回以上公演しているそうだ。
今に至る5年間の過程では当然、役者も年を取るので
演じ方にも変化があるとは佐川ちゃんの弁。
東大野球部員役の坊主頭の方の年齢を聞けば、何とびっくり40前。
颯爽溌剌と体育会系球児を演じる彼はどう見てもそうは感じさせない。
女優に年は無いとはよく聞くところではあるけど、
役になり切ることの意味を、実感させられる。


戦中の混乱期を生きた市井の人々の物語。
それぞれに夢や希望を持ちながらも、戦争によりままならない苦悩の中
懸命にもがきながら生きる様には
今の平和便利な世に生きる者として考えさせられることが多い。


原子物理学の世界では
まさに核融合反応が実現できるか否か佳境の段階に入り
原子爆弾がにわかに現実味を帯びてきた頃。
『俺たちは神の領域に入ってしまっているのではないだろうか・・』と
いみじくも理化学研究所のエースが言ったシーンでは
いつに増して静まる客席。
あまりにタイムリーなネタに、皆考えるところがあるのだろう。
それは舞台側でも感じているようで
佐川ちゃんによると
この場面は3.11を境に
演者の力の入れようも、観客の受けとめ方も明らかに変わってきたとのこと。


旅公演で全国各地を回っている彼ら一座。
今回、松本や伊那を訪れる中で信州の空気のよさが絶賛されていると聞く。
この地に住みたいと言う方も多いとか・・
同じ舞台を演じても、観客の反応は地域により全く異なり
東京のお客さんはシビアで長野のお客さんは温かいとも・・・
目の肥え方の違いもあるのかな・・?
佐川ちゃんが言うには
何でもありで便利な東京も、今では逆に不自然さを強く感じる。
舞台のような芸術で人は癒されるのだとしたら
東京にあれだけ劇団が乱立しているのは
裏を返せば
それだけあの場所に癒しが必要だということなのではないだろうか・・・
きっと、考えを改めなければならない時期に来ているのかねぇ・・と
終演後、3人で飲みながら語り合った。


今の時代の在り方を問う役割として
この舞台には今後も国内で広く演じて欲しいです。

(理絵さん美人でびっくりしました・・・だってさ・・)

(語る理絵  最後寝てしまってすみません・・)